十 五 色





こんもりと闇が茂つてゆく夏の蒼き鼓動に耳を澄ませて

恋人が独りぼつちで死んでいく まひるま不意の白き閃光

サンセット通りを抜けた砂浜にうつ伏せてゐる海色の靴

真つ白い絵を見たことがありますか 飾り模様の金の額縁

夏の夜はみづいろの砂敷きつめて円き玩具を転がしてゐる

またひとつまたひとつと失つてたつたひとつのぎんいろの鈴

火の色はあまりに赫し まなうらの白鯨深く闇に沈みぬ

やはらかな艶もて夏の林檎たち飴色の樹に透ける青空

木炭で描く横顔 くれなゐのガリア戦記を閉じて久しき

ゆつくりとあかくおほきくふくらんで星は一途に老いてゆくとふ

ゴリアテの首のごとくに掴みたる時計じかけのオレンジひとつ

新しき映画館にはとりどりの花輪と黒い天鵞絨の幕

さやさやと針のやうなる草萌えてみどりの庭にぽつんとわたし

耳といふ掌編ひとつ書き終へてうすむらさきの猫に絡まる

雨ののちくもりののちの夕まぐれ薄黄の雲はちぎれてゆきぬ




* return to tankapage *

** return to toppage **