伊 太 利 亜 恋 歌



君はどうしてもガブリエルがみたいと言い、僕は天使を見上げる君の顔がみたいと思った






真つ青な空の真中を飛びてゆくイタリアまでのフライト時間

銀色の翼のなかで観てゐしはアメリカ映画の恋のいろいろ

空港でユーロコインがほしいためミントのガムを身振りで買ひて

厳かにステンドグラスを仰ぎ見る旅人の背は美しきかな

薄暗き大聖堂に跪く君の祈りが聞こえてきたる

韻律に異国言葉が聞こえゆく小窓をひとつ見つけしことも

スイスとの国境近くの湖で国際電話を三分かける

朝食はハムとチーズとクロワッサン 昨日の月を食みたる心地

ヴェローナでジュリエットの右側の乳房を撫でる列に並びぬ

ヴェネツィアのインターネットで日本語をすらすら読みて安心しをり

カサノバの渡つた橋を渡りゆく 彼は何時に渡つただらう

宮殿の天井絵画に見惚れては幾度も階段踏み外したり

戯れにピサの斜塔と同じだけ身を傾ける君もわたしも

フィレンツェに合歓の花揺れふふぁふふぁと夢の吐息を扇ぐごとくに

フィレンツェの街を見下ろす広場にてシャボン玉吹く人に会ひけり

ウフィッツィの前で楽器を弾く男折りたたむ背を伸ばして暫し

跪くガブリエルの指先に触れ・・さう・・になり・・・白き刹那に

ふいに虹。葡萄酒色の服を着たマキアヴェッリが通り過ぐるも

ローマへと道は続きてカエサルの匂ひのやうな街に入りぬ

修道士四千人の骸骨と向き合つてゐるローマの休日

戦争を知らぬわたしがくぐりたる凱旋門を吹き抜ける風


詠 山科真白 短歌人



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