安部定のアンビバレンツの終点ににぶき刃物のきらめきを想ふ
堕ち方を知らぬ天使と戯れて月に背いたランボーを読む
月細りゆるりゆるりと現れた感情おばけと対峙してをり
束ねたる花の中からこぼれ出た緋色一輪夭折の相あり
「結局は男と女だからさ」上向いて動く赤き口唇
「まあ、あんたにやわからないわ」はさんでる細きタバコをゆらり眸で追ふ
美しき菩薩のごとき笑みたたへ積んでは壊すカミユ的積み木
片欠けの虹の袂をずんずんと腹の肉揺らすをんなが通る
嘘ほどき玉響ほどき絹ほどき肌ほどかれて奔放の月
文学もお酒も愛も嘘つぱち仮想屋台でおでんつつきて
ピンと張る糸の向うにゐる君に子猫のやうに奪はれてゆく
ああ さくらさくらと水無月に手に入らぬものを欲してをりけり
どうしても言へない言葉 嚥下してグレコの瞳で天なぞ仰いで