バルザック人間喜劇を詠む 


兵士と豹は、目にものをいわせて、じっとおたがい見つめあった。
頭の鉢を爪でひっかかれるのを感じると、あだっぽい女は身をふるわせた。
目は稲妻のように輝き、やがて荒々しく閉じられた。
「魂があるのだ・・・」と、彼は言って、砂漠の王妃の静けさに見入った。
それは砂漠のようにかがやいていた。砂漠のように白かった。砂漠のように孤独でしかも燃えていた。


 『毬打つ猫の店』
それぞれの道を歩める娘らを肯ひながら秋の深まる

 『あら皮』
必ずや望みの叶ふあら皮を持たないやうに吾は生きたし

 『砂漠の情熱』
雌豹に愛されてゐる確信と食はれてしまふ確信の信

 『サラジーヌ』またはロラン・バルト『S/Z』
去勢歌手ザンビネッラの歌声がバルトと吾のなづきをつなぐ

 『ゴリオ爺さん』
献身は死をもつて終ふ 黄昏の聖なる墓地に土を盛りけむ

 『谷間の百合』
本心を幾度も炎に焼べてゐる夜がパチパチ爆ぜる音聞く

 『セラフィタ』
セラフィタとふ美しきあなたを知りしことたれにもいはず眠りゆきたり

 『従妹ベット』
人生の舞台のうへの顔ぶれがいつのまにやら変はつてゐます




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詠 山科真白