北京逍遥




霧踏みて石のきざはしのぼりゆく吾の水無月は紫禁城より


外に出むと自転車を漕ぐ溥儀追ひて朱色の塀のあはひに入る


漸うに晴れて故宮の景のなか空斬るやうに燕が飛びぬ


伝説の悲話の薄れて珍妃井のちひさき窪に溺れゆかんと


しやりしやりと胡瓜を齧りつつ登る中国人の万里の長城


動かざる山また山の稜線に亜細亜の背骨は横たはりけむ


襲撃は不意に来たりぬ 城壁になだれのごとく人の溢れて


  外国に行けば必ずあの人に絵葉書を書く慣らひを愛す





山科真白 2012.6月


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