晩鐘の余響のごとき快楽など暮色に滲みて殺められしか

静謐の鬱引き剥がし真向ひのモジリアーニの女が動く

ブリューゲルの民衆より汝がさがし孤独の塗り絵色埋めんと

命燃す紅い滴る曼珠沙華ポキンと折りて御首挿げ替え

剃刀のやうな言葉を弄ぶやはらかな手の男と月を視る

名も知らぬ宙にひろがる綺羅星を ひとつはじいておはじきにする

びろうどの月を裂いて生まれたる激情の貌それもわたくし

肌理荒きはらわた銜えにんまりと黒猫ろんは闇にまぎれて

夏の夜に背に溶けゐる亡霊と前世巡りの扉さがせし

きりきりと裡に棲みたる抽象と がんじがらめの闇に堕ちゆく




(c) 山科真白  (Mashiro Yamashina)



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