舞踏否葡萄(ぶたふいなぶだう)



 葡萄園しんとしづまりかへる夜にメスもてひそむ切裂きジャックは

 傷ついた翅をひらひら彷徨わせ蝶は死国をたづねてゆきぬ

 枯れ枝は永遠(とは)の空への道しるべ蜘蛛も見事な糸を吐きたり

 春昼やジョイスの罠にのたうちて吾は葡萄の種を飲みこむ

 ロンドンとダブリン行きつ戻りつし前頭葉にたちこめる霧

 死の舞踏否葡萄食みむらさきの稽古着で舞ふバレエの時間

 ミモザの黄こころゆくまでふりかけむ季節はづれの葡萄は酸ゆき


山 科 真 白 2007年短歌人5月号

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