くつくつと林檎を煮つつ人妻の黒き頭蓋はきらびやかなり

レンデルが愛読書と言ふ恋人と白の洋館見つつ寂しも

陽だまりのアールグレイをかきまぜてきらきら揺れる花色ピアス

ざらざらの埋立地に棄てられて帰り道がわからなくなる

まへがきとあとがきのある恋に陥ち序章あたりのはぢらひのキス

薄皮のバームクーヘン指の輪にあつちとこつち噛りあふ夜

新しきパピューム耳朶に吹きつけて春らんまんの風に佇む

まつすぐにみつめあひたる双眸が君くちびるに閉ざされてゆく

待つ愛と待たせる愛の狭間にて白き乳房を抱いて眠らん

白からはなにも生まれない血の滴るるローストビーフパンにはさみて

見透かされ心の痂皮を撫づるごと春吹く風は温かきかな

地面から突き出た腕と握手して朔太郎さんと春を楽しむ

妄想のお花畑は黄色くて削いだ耳までさがしてしまふ

子を孕む春は巡りてざわめきの生殖器のすそ綴じあはせ

すべやかな肌に花環をかけられた女が椅子に溶けゆく時間

ノクターンが聴きたいといふ君の背にdolceの指をなぞらせてゆく

またひとつ秘密がばれて満開のさくらの下に男呼び出し

発芽した貝割れまびくキッチンにさみどり色の闇がぽつかり

天国に続くごとくの真つ白いエントランスで君を待つてゐる

洗い髪 ゆるらゆるらと乾かせり女あえかに 高層ホテル

インタネでかはりばんこに小説を書きて子猫になりゆくアタシ