ドストエフスキーを詠む 


「どんなことにでも堪えぬける力があるじゃないか」
もはや冷たい嘲笑を浮かべながらイワンが言い放った。
「どんな力です?」
「カラマーゾフの力さ・・・カラマーゾフ的な低俗の力だよ」


 『カラマーゾフの兄弟』
殺された好色フョードルの血、血、血、血、繋がりて床の血溜まりのうへ

 『悪霊』
スタヴローギンのなかにゐる吾そしてまた吾のなかにゐるスタヴローギン。 怖い。

 『罪と罰』
汝が脳に斧もて深く彫りこまむ打擲さるる百姓馬はも

 『白痴』
くれなゐの薔薇の蔓にて絡まりし男ふたりが吊るす十字架

 『未成年』
欲しきものそれはマカール老人の笑みと答へてしづかに笑ふ

 『貧しき人々』
中庭をへだてて交はす密やかな手紙に悲恋の透かしを入れぬ

 『百姓マレイ』
「狼が来る」・・・ 青空 林 静寂 農夫の指 狼はゐない

 『おかしな人間の夢』
幾度も作つて壊す楽園に吾はくちなはと向ひけるかな




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山科真白 2011年春