≪ エッシャーのみづ ≫



夢と夢持ち寄りし夜の繰言に輪廻のごときエッシャーのみづ



黒真珠、孔雀の扇、砂時計、背なやはらかき後宮の女(ひと)



うつくしき過去しか持たぬ紅薔薇が干されつづけてからからと鳴く



生きてゐるやうに置かれし剥製のうさぎの眸が光りてゐたり



彫像の乳房の尖に口づけて今宵やさしきオスカーの指



右頬を金の刃で削ぎ落とし月齢十九の月は笑ひぬ



週末の夜にまみづを噴きあげるフォンテーヌ恣意的曲線の妙



人類が死に絶えてゆく映画はね生者の街に梅咲きはじむ







北風に羽毟られし風見鶏冬空高く回りつづける



炎天に灼かれ耀ふ向日葵の花芯のやうにブーツの踵



美しきぬめりを帯びてエメラルド・グリーンの牡蠣フランスに生れ



荷ぐるまに乗りて鞭持つルー・ザロメ三位一体と虚妄なる冬



雑踏を過ぎゆく人らみないつか死して棺に横たはるらむ



ゆびさきが黒白鍵の縞縞にすべりおちゆく冬のエチュード



サムソンの力を借りて回しゐる小瓶の蓋は金に光りぬ



埋もれゐし智歯抜かれをり致死量の消毒の匂ひ溢るる時間





(C)YAMASHINA MASHIRO

2008.3月



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