金曜はグルウシェニカの頬色の薔薇を一輪挿しにけるかも

位置づけが曖昧なりて舌根で「他人」といふ名詞ころがし

烈情の冬の花火も見ぬままにふみ子の逝きし齢を生きをり

背表紙の君の名前をゆつくりと昔絡めた指でなぞらん

糸吐いて溶けあふやうに絡みつく逢魔が時に重ねしことも

止まること覚へられない左手のプラチナ色のマリークレール

「じやあね」つて東京駅で抱き合つた友のコロンが鼻腔くすぐり

君が駆くバイクの後ろに乗つかつて暖色抱いて海まで急ごう

砂浜で髪・か・き・あ・げ・る無造作にサイレントムービースローモーション

ゆつくりと昨日わたしを撫でてゐた今日は輝くメスを持つ手指

鎖骨よりこぼれ落ちゆくせつなさが しんしんしんと降りつもる夜

22時 インターネットで待ち合わせディスプレイに友らは集ひ

用のない指輪ほうつてみたけれど踵にこつり空は遠いね

塗り込めた男の肉に頬つけて洞調律(sines rythm)聴いてをりけり

重ねあふむなしき言葉噛みしめる クレセントムーン揺れるピアスは