春のペーソス




こしかたを思へば花も吹溜り らんぷミュージアム休館の報


春泥に雪のほどろも忘れゆくけふ愛すべき雲の純白


ブルー・モルフォを知りたるのちのわれにしてなまぬるき美は翅音すらなき


ひねもすの海にただよふ倦怠を春の嵐に巻き上げられて


内輪にて春財布ブームをおこしたる微功を派手に称へられたり


効果的にツボ押すグッズを貰ひ来てそこらへんぢゆう圧してみたるも


川端の『眠れる美女』に引かれゐる中城の歌、夜のきざはし


しらほねの崩ゆる気配の薄桜 御影の奥の枝垂れにさやる


六甲の冬に隠さふヒマラヤの秘境のケシは青く開きぬ


たはやすくさやれぬもののおほかりき浮世のなかの禁忌を数ふ


貼付より難きを知るや頑強に剥離を拒むシール一枚


涙腺の弛ぶツボ突く縄紋のシャツ着た爺の昔ばなしは


なみなみと深き器に注ぎゐる忘れたきこと真水にかへて


山中のオルゴール館に風わたり優しき音色のかさなりてゆく


ミツマタに例外はなく三つ又に枝をわかちて花をつけなむ


みゆうといふ製菓店よりいでてのち明るき方の角を曲れり





(c) 山科真白  (Mashiro Yamashina)  2013年


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