蟷螂生-半夏生




給湯器、ハンドミキサー、乾燥機、壊れづくしの皐月が終る


口ひらき「あ」、口とぢて「うん」ひそかなる阿吽の呼吸が機械にもあり


ヌーヴォーか、風呂が沸いたと囀るはエステン作曲「人形の夢と目覚め」


突然のザーザー降りを横切つてまだ咲き初めぬ芙蓉に馴寄る


引き算の美学を学ぶ申年の梅干きゅぅっーと舌にうづめて


朽木だと忘れ去られた幾年を経て芽吹きたる薔薇のさみどり


完璧の角をまあるく削る午後、漆をつたなく塗りこみながら


掬はれるやうに夜風に運ばれてうつし世にまた戻り来たりき


反復が過剰になりし日常に氷山とふ名の白薔薇が咲く


海まではすぐそこだから一滴のみづも要らない今は要らない


凡庸で不器用ゆゑの傷だらけいつかは遭へる凱風快晴


だれひとり渡つてゐない吊り橋を微かに揺らす雨脚がくる


憧れはバラの育種家 魚影など忘れてしまふ色彩の夏


モロッカンオイルを髪に馴染ませば熱砂の国の奇譚をおもふ


ジャングルの深きみどりも知らぬまにリニアモーターカーの時速五百キロ


地を撃った鉄砲雨が通り過ぎ旧居留地のビルヂング出づ






(c) 山科真白  (Mashiro Yamashina)  2013年


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