心にも火を持つことを与へしや プロメテウスの赫きトーチは
夏の日にまつすぐに立つ向日葵が黒焦げになる白昼夢(ゆめ)をみてゐる
透きとほる焼売並べ差し向うチャイニーズキャフェの午後の憂鬱
刑場に引き立てられる獣らのレッグチェーンの冥き擦り音
少しだけ離れてみてもいいじやないカサブランカの花粉は濃ゆし
樹の下の空蝉指でなぞりつつ君は今頃どこにゐるのか
からつぽをヴィトンに詰めて三日だけ旅に出たいと思ふ日ありて
緞通の手触りに似た苔庭に文月の風は通り過ぎたり
高速のサービスエリアのグレ電でインターネットする我の横顔
わたくしを描いてみたいといふ人の指に遊べる六法全書
はつなつの雑踏深くまぎれゆく見覚えのあるキャミの肩ひも
乱暴にほどかれてゆく紫陽花の萼と花瓣をピンで挿むる