此糸の糸手繰るサロメの
爪先を寂しきいろに染めゆけば浮かびて消えるヨハネの首が
まぼろしの恋は指紋を遺したり点々々とこぼるる花粉
寒雷や 硝子に散らす花びらがいちまいにまい笑ひはじめる
まう少しお眠りなさいいつまでも明るく光る空の真下で
夥しき耳が渚に打ち寄せて声はひそひそ立ち上がりけり
ゆつくりと心が疲れてゆく時間 秋、冬、そして さくらの匂ひ
やはらかくさしこむ朝の陽のなかでコトリと狂ふしづかな未来
絹の糸ナイロンの糸木綿糸此糸の糸手繰るサロメの
愛するとあなたは小さく呟きて 三年坂に雪舞ふ季節
ゆめにみしあさきゆめみしほうたるはほうたるは朝死んでをりしよ
死ぬのなら海より暗きその部屋の敷きつめられた緞通のうへ
カラカラに乾いた蛍がてのひらでゆんゆんゆんと鳴いてるやうで
こはれゆくこころはとても美しく蛍火を追ふ夏のむかうに
カタコトとちひさき箱は悲しみの音と一緒に捨てられにけり
まひるまの花火のやうに透きとほる炎は静かに消されてゆきぬ
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