・・・・・ 鎖 の か た ち ・・・・・




これ以上晒すものなき白日のレンブラントの吊るされた牛


偶然が重なりあひて屠られた白きトルソは堀り出されたり


アルゴスの眼を貼りつけた羽根展げ悪しき孔雀が私に向う


新しい黒子がひとつ増えました。ふたつの季節が流れたあとに


天晴な科白を吐いたそのあとのくちびる強く吸はれてをりぬ


さみどりの玻璃の瞳が気に入られ連れ回されたアンティックドール


さらさらの砂に埋もる足くびを抜き取る勇気が持てずにゐます


ほんたうにきらひになつてしまひませう ざつくりと裁つあなたの掟


光沢も色も形も何もかもしやぶり尽くした鼈甲の飴


優しさを縒りあはせつつ頃合に煮こごりてゆく器を持てり


微睡みの君がソファーに沈む間に焼き上げてゐる木苺のパイ


気狂ひの見目麗しき女から「猫にどうぞ」と鈴を貰へり


わたくしの首のかたちに窪みたる腕携へ君は去りゆく


朝露を吸ひ取るようにくちづけるあなたの癖も好きでゐる唇


伝言を伝へるために駆けてきた ただそれだけのそれだけのこと





(c) 山科真白  (Mashiro Yamashina)



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