≪ 猫クウも ≫



緋のいろの釦のやうなかたちして押印のごとく口内炎あり



夢想する絶景の丘、ユーレカの酸ゆき檸檬が実りてをりぬ



なにもかも沁みて痛んでしまふ日よ弥生の霰に降られて帰る



エリザベスカラーを巻かれ猫クウも傷の癒へるを待つてゐたのだ



さういへば冬からずつと咲いてゐる花があつたよ ちひさき花が



火の中に正義の味方は飛び込みぬ回り道などしてゐる間はなし



たんぽぽの土手で会はうか蝶々に生まれかはったふたりとなつて



春近きみづを与へる歓びや莢豌豆のさみどりの萌ゆ







黄金のオメガ三系脂肪酸スプーンに乗せ皐月夕ぐれ



いにしへの聖杯は銀 名を彫りて岩窟ふかく隠したる手の



なにもかもジャブジャブ洗ふ昭和の日うす曇りなる陽の下に干す



ここにきて落涙必至のストーリー 丸めたハンカチみづの色して



ディープインパクトの息子はキズナ草萌ゆる風駆け抜けてどこまでもゆく



はやすぎて追ひつけなくてもいいやうにヒト用ベンチが町中にあり



こんなにもほどけてしまふサテン地のリボンしゆるしゆるくちなはに似る



通り雨のやうな喧騒 十字路はやがて暮れゆく点滅信号





(C)YAMASHINA MASHIRO

2014年



* return to tankapage *

** return to toppage **