檸檬八様
喉元に酸ゆき果実をぶらさげてアルチンボルドの冬の横顔
テーブルの檸檬転がる先に待つテロルの気配 不意にやみたり
ざつくりと八分割にされてなほ艶やかなれる檸檬を愛す
乳房にはたとへられなき檸檬ゆゑかたさきはまり果てむとするも
音階をくだりて響くチェロの音を檸檬浮かせる湯船で聴きぬ
朽ちてゆくことさへ知らぬ節くれた拳のやうな檸檬がひとつ
戦争に檸檬は似合はぬ 絡み合ふ枝のあはひを凩がゆく
狼のやうな犬歯を突き立てる冬の檸檬に苦さ残れり
山科真白 2008年
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