あなたから出て行かないと誓ふから南京錠の鍵をください

発狂のオフィーリアを語らへる似非シェークスピアの円形の額(ぬか)

花冷えの京都に埋めた過去がある香水の名はディオリッシモ

コンバーチブル闇夜走らせ干涸びた君のクローン棄てに行きたり

おそらくはハムレットの父だらうブルーコンタクト入れてゐたのは

わが胸で呆けて眠る稚きを髪の香ごとに静かに揺らす

手も脚もちがふところへ戻された君の弄くるパズルの破片

あまりにもちひさき靴に成り果てた人待ち顔のドガの踊り子

パソコンで飼へし魚のあぎとひを見つめる猫の濃艶なる毛並

ハイド氏に手配をされて乗る車 本当にあの人に逢へますか

リーガルに白きサンダル寄り添ひて黄昏の淵 跨ぎつつ雨

やはらかい皮膚に浮かんだ傷跡にやさしく撓ふ疵のある指

「あのことは誰にも言はずにゐてあげる」片目で喋るポーの黒猫

三本の向日葵が立つ軒下に簀から覗ける白い足くび

吃音のひどき少女が繰り返す あ・あ・あ行 か・か・か行

ゆるやかな陽だまりのなか腐りゆく有精卵の殻のざらざら