<!--日常--!>


 



生者らに朝は訪れまた我も白衣の上の髪を縛りて

処置室の薬瓶に挿す芍薬のややいつかしき花の静けさ

逝き際に出会ふ縁を思ひをり 額紫陽花に雨は降りつつ

薄らかな呼吸の人に触れたらむ 消毒液を纏ふ指先

死体へと移行していく生体の心臓をただ押しつづけてゐる

日の蔭のきはやかに咲く十薬に白衣揺らせる風は届きぬ

たをやかな嘘の溶けゐるバイアルの抗がん剤のブリリアントブルー

かすてーらと発音をする老人の独居に欠けた湯呑みのひとつ

病みたがる老婆の横に腰掛けてともに黄昏眺めてをりぬ