真つ白きうさぎが棲むや逢坂のぽつかりと浮く金の望月
仏像の足に絡まる此の蛇は過去世の使者か 京の夕暮れ
告ぐることなきまま仰ぐ罅多き磔刑像は鈍く光れり
陽に晒す真夏の耳に流れこむフジ子・ヘミングのLA CAMPANELLA
風船が空に溶けゆくその色をビルの硝子に凭れて見をり
約束の広場で待ちぬソロモンの腕に抱かるる夏の残照
おそなつの男の肌は麦の色。クイーン・オブ・シバの香油を焚きて
手に包む君の未来に美しき雨。ヒトゲノムは解読されぬ
いつからかkeywordと呼ばれたる剥き出された言葉の破片
たまゆらの熱い瞳はまう風を追つてゐるのか夏の桟橋
葉肉の厚き熱帯植物の中を歩まぬ ルソーとふたり
近松の脚本に似た筋書きで堕ちゆく女のジバンシーシャドー
陽ざかりの真夏を走る地下鉄に独語激しき老女をりけり
まなうらに泳がせてゐる透明な魚の背骨を数へてをりぬ
古の文明巡る旅に出る君を見送る三番ゲート
かの森の光の神と遊びたる妖精たちに逢ひにゆかんと
契約の履行の日まであと二日爆弾を抱く心地の夜半に
仰向けばシーツの上に扇状に広がつてゆく髪を持ちをり