動物の園にも秋が訪れて犀は寂しく護られてをり

狩りもせず屠られもせぬライオンの鬣やはく風に揺らるる

にんげんという種目の愚かしさゆつくり閉ぢる獣の目蓋

携帯に黄色い猫を棲まはせてスティリターノと呼んでる堕落

窓越しに風のかたちを見てゐます。くるくる回る木の風車

赤道の上にゐるらし友からの葉書の角を撫でてゐる午後

白昼に薄い紅茶を飲みながら或る告白を聞いてをりけり

同じ日の同じ時刻に星を見る約束だけを果たして眠る

触れたなら壊れてしまふ妻ありきアンドレ・ジッドの白い結婚

あの人の今日の話題は幽霊に出会つた場面。ope室のなか

耳たぶにクルスをつけた人と観るイタリアオペラ第五幕第三景

秋に咲く鳥に似てゐるむらさきの花の毒など語らひてをり

少年の懐の刃で削がれたるごとき象の月は浮かびつ