ゼフュロスの風
ぺりぺりと薄き硝子を破かむと春の嵐は吹き荒れてをり
西風に頬膨らます美男子のゼフュロス春を携へて来ぬ
春の陽の温んだみづに溶かしゐる残滓のやうな冬の埃は
尾の長き生きものしゆると音たてて近づきてくる春といつしよに
頤に蜜をこぼして溺れゆく 木乃伊作りは皐月がよくて
そらまでもひろくあなたを抱きしめて黄の砂さらと落ちゆくゆふべ
朝一番エイズ患者の腕に見る自殺未遂の縫合の跡
新しきさみどりいろのものが欲し けものの肉に巻き込む野菜
不器用なやさしさなれば愛しく春風のなか繋がりてゐる
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