歌仙    秋の声の巻

歌人   藤田初枝  矢嶋博士  両吟

  
初折の表
発句 ひつそりと遊びゐるかな秋の声 初枝
どんぐり落ちるみちのなき庭 博士
第三 月待ちて今宵いつまで明かすらむ 初枝
みるふぃーゆなど二つ目を焼く 博士
買ひ物の足取り軽く万歩計 初枝
折端 麦藁ごしにくろびかる肩 博士
初折の裏
折立 はるかとも入道雲の真白にて 博士
山科寺の僧うつくしき 初枝
くすのきに抱かれてねむるかのをみな 博士
やがて途絶えむ夢の通ひ路 初枝
換金に成らねば券は棄てられる 博士
芋焼くなかに混じる悔しさ 初枝
オリオンを遠ざかりつつ冬の月 博士
リヒャルト・シュトラウス乗せて空風 初枝
ヨハン来て銀の騎士来るゆふぐれは 博士
決闘までの時刻(とき)を祈りて 初枝
十一 花に酔ひ空をゆめみし雛の鳥 博士
折端 見守るやうにゆらぐ陽炎 初枝
                   
名残の表
折立 蕗の薹屈んで摘める老体を 初枝
かわいらしきと人いふらんか 博士
「好き」といふ言葉飲み込む電話口 初枝
恋ひすぎて持つ暗黒の憎 博士
待てど来ぬ短き夜の蚊やり火の 初枝
おけらのこゑにおもほふことはも 博士
きんきんに冷えたビールにお説教 初枝
表参道より御堂筋 博士
「JALで行くお得なツアー」目にとまり 初枝
われはハワイのマクドナルドへ 博士
十一 牛丼が消えて今年の月の雨 初枝
折端 すきとほりたるもみぢ薄き葉 博士
名残の裏
折立 まつさをの運動会の朝に起き 博士
一等賞がちらついてをり 初枝
掃除機の無音化そして軽量化 博士
四月馬鹿とて浦島太郎 初枝
狂暴の本能ありて花が降る 博士
挙句 京でふたたび会はむ春風 真白



捌 : 山科 真白     2003年10月26日-2004年3月7日




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