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題詠 春の花
梅の香を纏へる死者の唇がつぶやきてゐる十二音綴句(アレクサンドラン) 真白
父の好みし無濾過原酒の梅の宿彼岸に注ぐ術はあらぬか 久仁子
梅の香のかぐはしき宵祖母と居て二人写真を撮りし前栽 とも子
芯つよき女のごとく咲くと見て枯野の果ての白梅ひとつ 龍人
庭上に寒梅咲けり生まれてもまた生まれてもひとりといふも 恵子
よこたはる体のうへにさはさはと刷毛のごとかる梅の香あはれ 燦
蝋梅のろうの漢字が書き辛く季節のたよりを前略で書く 栄子
袂いつぱいはらませ駆けて来し人のあらき息にも梅の香のして 和子
梅園は梅の香に満ち恋人を亡きものにする儀式始まる 初枝

ほんのりと甘く品よき味なりと菫の花を食べたる記憶 龍人
野に遊ぶ少女らの靴硬ければ踏みしだかるる菫花あはれ 燦
もしかして菫は昨夜泣いたかも冬陽にきらり光る花びら 栄子
青銅の騎士の踵に咲き群れる菫の花は風をうべなふ 真白
黄昏の橋よりゆつくり落ちてゆく菫一花か明らかならず 恵子
百フイートも飛び来て花壇につきささる九月十一日の菫色の腕 和子
すみれ色の露のふるへをあやなせる岩崎宏美の声のさやけさ 久仁子
菜の花
黄金の菜の花畑は窓に見え来迎のごとき体位す、あはれ 燦
花照りは海に及びて一面の菜の花の沖あをく赫ふ(かがよふ) 恵子
雪女が抱えてみたいと呟いた腕いつぱいの菜の花の束 初枝
黄砂ふるこの山里の風景に失われたる菜の花畑 龍人
パン買ひに影ならばせてゆく時の菜の花匂ふほどの幸なり 久仁子
ハギスてふスコットランドの料理食むほんにゆかしき菜の花あへよ 和子
初めての月の障りになりし日の菜の花畑鮮明に顕つ 栄子
どこまでも黄を敷きたる菜の花のまなかにひそと獣の匂ひ 真白

チューリップ
阿蘭陀の花市に見しチューリップ二十一時の飾り窓かざる 恵子
チューリップ園出で来る人の唇は真野響子のごとき形す 燦
奪はむは乙女と黒きチューリップ 水瓶座より神は降(くだ)りぬ 真白
チューリップ一輪飾るそれのみに華やぐ部屋に化粧しており 栄子
手打ちなるパチンコありきチューリップに跳びこんで行く玉のさやけさ 龍人
好き嫌ひ恋うらなひをするほどもあらずちゅうりっぷの花弁のかさなり 和子
かの姫の巻き髪おいて生まれしかオウム咲きとふチューリーップの在り 久仁子
纏ひしは裏切りの色誘はれて桜の園にゆめな迷ひそ 初枝
京洛の琴きき茶屋の櫻もちこの味知らず逝きし母なる 恵子
くれなゐのワインを運ぶギャルソンの桜色した爪の淡さよ 真白
『桜姫全伝曙草子』繙けば花の栞を誰か挟める 燦
その名もちて散らむがために作られし戦闘機在り桜花はも 久仁子
永久(とことわ)の祈りのごとくと人は言い蒼穹に咲いているさくら花 龍人
しろじろと桜散りゆく夕まぐれ何があっても後へは引けぬ 栄子


2008年1月4日-2月29日 PRIVATE BBS にて