午後四時少し肌寒し






:: 初枝
黄金色の午後四時少し肌寒しジェームス・ボンドが死なせし悪人
:: 真白
草叢に少女がびらびらはらわたを晒してしづかに殺されてゐる
:: 初枝
空を見る青には染まぬ身と思ふ女人五つの障りあるゆゑ
:: 真白
風荒ぶ夜の竹群に迷ひこみ龍田彦としまし逢はむか
:: 初枝
持たざるを美徳とせんか「断捨離」といふが流行りて人ら老いゆく
:: 真白
ルネサンス、芸術を焼き自らも火に炙られた僧の鷲鼻
:: 初枝
時雨寺に廃仏毀釈を免れた仏像たちが微笑んでゐる
:: 真白
白梅を一枝渡す手をさがし乙女は千手観音のまへ
:: 初枝
極楽にアイスクリームはありますか文殊菩薩はyesと言へり
:: 真白
もんじゆとふその原子炉のなかりせば銀の魚らと吾は泳がまし
:: 初枝
老い人はマグマ湧きたる地に立ちて創造主の声を待てりと
:: 真白
夢で逢ふサロメのこゑは泡雪のやうに儚く吾と繋がる
:: 初枝
かげらふの身だと気付けばかげらふの身が愛ほしくなりにけるかも
:: 真白
地の果ての北へ離れたる夜に浮く極光の襞冬空を統ぶ
:: 初枝
悲しみは忘れたころに訪れて百十頁に君の筆跡
:: 真白
メルヴィルの本より海に飛び出したモービー・ディックの行方を追ひぬ
:: 初枝
奪はると破壊されきと永遠を信じたミイラの結末を告ぐ
:: 真白
灼熱の赤き砂漠をしゆるしゆると身をすべらせるくちなはがをり
:: 初枝
をとこにもをんなにもなるつぶやきがひとのこころをくるはせるなう
:: 真白
遅咲きの水仙を待つ蝋梅が黄の言霊を伝へゆくらむ










藤田初枝 and 山科真白

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短歌コラボレーション2011年1月2月