黒き曼珠沙華






:: 初枝
大輪の花火が照らす土手の上に涙をこらえて黒き曼珠沙華
:: 真白
裁かるるラスコーリニコフの上睫毛ツンツン北のシベリアへ向く
:: 初枝
グラビアの美女の目玉が憎らしい happpy berrry で髪切らせつつ
:: 真白
乾かせたのちの毛先に滲みてゆく洗ひ流さないトリートメント
:: 初枝
大判のふかふかタオルにくるまれて胎児に戻ってゆきたい夜のあり
:: 真白
潮満ちて月も満ちゆく夜ゆゑに赤子の匂ひがひたひたと来る
:: 初枝
「ただ今笑顔で絶讃地球を侵略中!」メイドの叫び
:: 真白
妖怪のチラシを手に持つおじさんと清明神社で参拝をせり
:: 初枝
フォースに暗黒面があるやうに女にも善き面があるはず
:: 真白
過去となる面を剥がして捨てにゆき明日は未来の貌を貰ひぬ
:: 初枝
衛星のつぎつぎ地球に落つる日よ 過去は未来の脅威となりぬ
:: 真白
元華族鏡のなかに微笑みて「ごきげんやう」と告げて去りたり
:: 初枝
かなしみは挨拶もなくそこにゐて一緒にテレビを見てゐるかもしれず
:: 真白
人生の舞台のうへの顔ぶれがいつのまにやら変はつてゐます
:: 初枝
朝の仮面午後の仮面と使ひ分け素顔になりたき冬の近づく
:: 真白
いつはりの糸は切りませほんたうの赤き御糸をうつつに結ぶ
:: 初枝
からつぽの胃にソーセージを食みたれば頭痛のわれは死にたくなりぬ
:: 真白
屋根裏に蛇の蠢くメドゥーサの首があるとはたれも知らずに
:: 初枝
神の無きあひだにどんな悪させむ思ひしままに霜月になる
:: 真白
冬籠る巨きなけものが山へ入る草踏む音に夜は清みけり










藤田初枝 and 山科真白

* return to 歌鏡 *

** return to toppage **

短歌コラボレーション2011年秋