黄金のゼウスの雨に濡れてダナエは






:: 真白
冬籠るけものの傍で眠りゐる吾を揺さぶる春の嵐よ
:: 初枝
斧振ふ音で目覚むる日曜の裏庭に伐り倒さるる楡
:: 真白
いろくづを擦りあふやうに側溝に外来魚が棲むも忘れつ
:: 初枝
雑草に覆はれてゆく洋館の塔の上なら囚はれてゐん
:: 真白
ぬばたまの夜の底にて黄金のゼウスの雨に濡れてダナエは
:: 初枝
運命に脅ゆる男の多きこと女神は淋しく笑ひをるとか
:: 真白
安寧は壊さるるため不動たれ明日奇襲せむ竜巻のうねり
:: 初枝
浴槽に薔薇の花弁かぞへては思ひ出を消す遊びをしたり
:: 真白
薔薇水を肌に吸はせてやはらかき皐月の草に戯れながら
:: 初枝
王族も非差別民も血の味は変はらぬもの蚊 夏を生き抜く
:: 真白
耳を削ぎ鼻を削ぎたる風に向き覇王の像は崖に直立つ
:: 初枝
覇道ゆく澄んだ瞳に魅せられて何人だつて殺してあげる
:: 真白
残兵のしづかにひそむ叢原に少女をひとり置き去りにする
:: 初枝
泣きたくて息を吸へども叢原のみどりに頸を絞められてをり
:: 真白
叢原の果てまで逃げてゆくダフネ ゆびの先より月桂樹となる
:: 初枝
王冠に締め付けられて身悶える女神の裸身、微笑、くちびる
:: 真白
忽ちに雨の匂ひして瑠璃蝶が磔刑のごと標本箱に
:: 初枝
裏庭に蠢くモノの息づかひ感じて今日もしづかにねむる
:: 真白
ドクダミの真白き花も殉教のごとくに果てて盛夏の陽射し
:: 初枝
十字架の上で灼かるる運命と思へど暑し生贄の肌










藤田初枝 and 山科真白

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短歌コラボレーション2012年春夏