ねうねうと鳴く猫の仔が欲し






:: 初枝
ひとりゆく道は音なく行方なく過去か未来か 火薬のにほひ
:: 真白
捨てられてか細いこゑで鳴いてゐる猫の仔を欲る夏のくちなは
:: 初枝
ねうねうと聞いた気がして振り返る月なき夜の荒野ゆくとき
:: 真白
手放したものはとつくに消えゐてあとは忘れてしまふだけです
:: 初枝
思ひ出の街の名前も敵の名も恋人の声な・あ・ん・も・な・い・よ
:: 真白
十八万でペットショップにて売られむと白梟が飾られてゐる
:: 初枝
運命と思へどつらし産まれるか産まれないかもサイコロ次第
:: 真白
遺伝子を継ぐなりはひや はからずも亀から猿にかはる歌舞伎名
:: 初枝
人生といふ舞台上どこにでもいつでも奈落の入り口はあり
:: 真白
しののめの別れを回想する処暑に氷菓はほんのり甘さを残す
:: 初枝
夜を行けば朝が見えるといふ寓話闇も孤独も案外楽し
:: 真白
ぷつぷつとブラックベリーを煮つめゐる夏の終りの火照りは淡し
:: 初枝
レクイエム聞けば明日が恋しくて夏の終りはからつぽの窓
:: 真白
河原に芒穂の揺れさはさはと京に生れたり iPS細胞
:: 初枝
古老の伝ふる旧聞読みたれば茨の罪が痛くて泣ける
:: 真白
一睡もできなくなりて死に至る病が縷々と此の世につづく
:: 初枝
「駆け出しの刑事(デカ)だつたころ」張り込みの車中で言つてゐる夢を見た
:: 真白
灼熱の太陽もまたまぼろしと移り季の夜に寒鰤を食む
:: 初枝
餓鬼道に落ちなば喉も乾くらん遠くに地獄の煙ひとすぢ
:: 真白
いにしへの聖杯は銀 名を彫りて岩窟ふかく隠したる手の










藤田初枝 and 山科真白

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短歌コラボレーション2012年秋冬