蛇の目覚め
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銀色の脚をしまひてゐるといふ蛇の目覚めに逆らひがたし 真白


その午後は小雨まじりの晴天で〈殺人日和〉とつぶやいてみき 初枝


ピストルの乾いた音にたましひはさびしき芯を撃ち抜かれたり 真白


「えェ〜マジでィ〜」白痴らしきが街頭で白痴らしきにインタヴューせり 初枝


秋の夜に朱雀門から下り来た鬼の笛の音細く聞こゆる 真白


ざわざわと魑魅魍魎が縋り付く素足の夢の余韻粟立つ 初枝


秋晴れの空を突つ切る鳥追ひてアクセルを踏む高速道路 真白


西へ西へ日の沈む町見果てんとひたすら歩くをんなの話 初枝


ワガトモとワレの会話に入り込むステパンといふ『悪霊』の人 真白


純白の斎宮(いつきのみや)を犯しけむ昔男に会ひてみたけれ 初枝


業平の狩りたる鷹のはらはらと羽根の散りゆく夢にさやりて 真白


忌まはしの記憶はさらり捨て果てて生まれ変はれるものぞをんなは 初枝


あるときはパルチザンのごと闘ひてふりまはしゆく剣きらきら 真白


格さんが助さんが斬られじりじりと後退する他なき爺一人 初枝


印篭をかざせば皆ながひれ伏すと知りつつ負けるドラマの見せ場 真白


すつぱりと政権交代成し遂げて陰陽師となる彼かもしれず 初枝


千年も降り積もりたる雪のうへ不意に椿が赤を散らしぬ 真白


さくら咲くサクラ舞ひたる春の夜の桜の下でくちづけをしき 初枝


さくら降る刻をひそかに教へられ月よりけふは時計を愛す 真白


満月に神の孤独を哀しみて神の幸い今日は祈らむ 初枝



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HATSUE FUJITA & MASHIRO YAMASHINA

2009.秋


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丸山応挙 「雲龍図屏風部分」