孔雀の破片






:: 初枝
舞踏会果つれば部屋に戻り来て後ろ手に今日を閉ぢて眠らむ
:: 真白
夢の戸を開くれば美しき夜のなかに孔雀が羽根をひろげゆくなり
:: 初枝
愛のない求愛のやう いつまでも少年だつた前世の記憶
:: 真白
敦盛の首を落とせし直実よな泣きそ泣きそ西日の燃ゆる
:: 初枝
輝いてゐたはずだつた十七の魂(たま)を鎮めむ琵琶の音もがな
:: 真白
春浅き雨に濡れゐるふらここを微かに揺らす風の手の見ゆ
:: 初枝
弥生には別れたひとの思ひ出をそつと朧に清くしなさむ
:: 真白
この庭に百合を千本植うるとふ声のかたへに凭れゆくかな
:: 初枝
しつとりと樹の洞に棲む母と子と猿に小鳥に愛されてをり
:: 真白
颯爽と猿楽一座を引き連れて分に過ぎたるバサラを好む
:: 初枝
修羅の道地獄への道示されてどちらを選びたいのか我は
:: 真白
中有経てそなたはひとり六道のいづれに生まれかはるとせむや
:: 初枝
絶対に許しませんと唇をふるはせ友の最期のことば
:: 真白
織り里の乙女の指が手折りたる梅一枝の匂ひ満つるも
:: 初枝
聳え立つバベルの塔の一隅にただ一輪の野の草のあれ
:: 真白
やはらかい春の光に遊びゐる紋白蝶の影に触れにき
:: 初枝
歌詠みが胡蝶の夢に現はれて蝶の歌など澄まして詠みぬ
:: 真白
道の道を探して歩く道すがら木苺匂ふ道に迷ひぬ
:: 初枝
サフランの蕊になかゆび染めしめて男を殺すことなど思ふ
:: 真白
しらほねの横たはりたる春深きさくらの園に風は流れる










藤田初枝 and 山科真白

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短歌コラボレーション2010年3月