河童の里に幽か笛の音






:: 初枝
月明かり映す湖面をうるはしみ河童の里に幽か笛の音
:: 真白
薄絹を肌に纏へば夏の夜の白きをんなに近づきにけり
:: 初枝
海の向かう恋人の来る予感して花火の後の静けさを待つ
:: 真白
突然にピアノソナタの鳴りいづる愛の嵐に揉まれよ おまへ
:: 初枝
「なつねむり」つぶやきしひと恋しくて夢に蛍の乱れ淫るる
:: 真白
囚はれて男の籠に眠りゐる女をみづにしづめてもなほ
:: 初枝
夕焼けの血の色になり隠れんぼ鬼になつたらもう帰れない
:: 真白
老木の霊に逢はむと仄暗き逢魔が時に忍び込みたり
:: 初枝
風の道追へば見知らぬ土地にゐて木乃伊取りはやつぱり木乃伊
:: 真白
しらほねは海に撒かうか樹の下に埋めよか口に銜へて逃げやうか
:: 初枝
ホンジュラス 知らない国の名を挙げて不思議な話をする青年よ
:: 真白
日本語で台詞を言へばジェラートも甘く匂ひて「ローマの休日」
:: 初枝
真実の口は閉ざしたままにして さもなくばまた洪水が来る
:: 真白
神鳴は落ちぬ桑原、桑原とつぶやきながら歩くロボット
:: 初枝
B型で魚座のわれが微笑めば道理引つ込む道理ではある
:: 真白
B型で水瓶座のわれ泣けば寓意持ち込む寓意ではある
:: 初枝
浪の下の都を指して沈みゆく静かな閑かな深夜の宴
:: 真白
水底の草薙剣に群れ泳ぐいろくづの名を吾れは知りにき
:: 初枝
群肝の百鬼餓鬼が集ふらし今宵議題は不明老人
:: 真白
黄昏の誰も知らない神隠し常世の夏にうから溢るる










藤田初枝 and 山科真白

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短歌コラボレーション2010年8月