2000年短歌人6月号 町野修三作品
手のひらに発生繁殖しつつある疣いま五つ赤子がひとつ
手持ちぶさたにて撫でて不思議な愛着よわが手の疣そのブツブツが
棲み着かれいること許す春うらら手のひらの疣足の水虫
公園に青いテントの数増えてやや春めきしことを喜ぶ
「さすらう」と夢のようなる言葉なりき思えばゆとりある時のこと
零時半の最終電車の音聞こゆ大きな黒い幕ひくらしも
歌人 町野修三的写生習作 山科真白
娼婦立つバス停前で笹緑茶飲みて栄子さんと町野氏を待つ
颯爽とパープルチャリに跨つて男町野は登場したり
イボじやなくそれはタコだと居酒屋で山科真白は訂正をして
鷹揚にひぃふうみぃと胼胝の面数へて噛みし剣先の烏賊
時々はその胼胝舐めると言ひければ真白は指を慌てて拭ふ
タコちやんの正式名称は胼胝腫(べんちしゅ)でついでにイボは疣贅(ゆうぜい)と言ふ
酩酊がレベル3に達すれば栄子と真白は薔薇に見えたり
うだうだとウダウダウダと管巻きて男町野はチャリで立ち去る
町野修三 2000年6月11日詠
胼胝か疣か知らずともかくわが指に住まいくれればめぐしかわゆし