葉月の奈良の都に集ひけり





しろたへのリネンのシーツ君の手で干されむとする まつたきの夏 久仁子


真剣に手元見つむる乙女らの眼差しに焼かるる豚玉ふたつ 初枝


はんなりと抹茶を飲みて別れゆく京の都に夏が極まる 真白


進捗を尋ねくるメールどれもこれも遅れてをれば返さずに閉づ 久仁子


幸せを強制されける紫の君とふ結論 講座を終へき 初枝


道長が紫式部に手折りたる女郎花こそ移ろひにけれ 真白


幾たびも前脚揃へなおしてはわれを見上ぐるとび色の目の 久仁子


五十路(いそぢ)にて子を生さむとふ執念の女心を羨しみてをり 初枝


子は乳の匂ひにまみれ母は子の温さにまみれ眠りゆきけむ 真白


兵児帯の揺るる背中が振り向けばシッカロールの白い鼻さき 久仁子


男から逃るるやうに小走りの白き首筋 目をそらしけり 初枝


黒白の階をのぼればドビュッシーの高き響きに流離ひてゐる 真白


永遠の不在であれば心地よくフジ子・ヘミング"La soiree dans Grenade" 久仁子


陰りゆく夏空の下てふてふが急ぎどこかへお出掛けすらし 初枝


さめざめと嘘をつくのが商売の占ひ館に燈る夜明かり 真白


タロットのカードは吊られた男にて零されし酒をぬぐうてをりぬ 久仁子


行き先の見えぬ旅なり人ごとの別れの仕草こころに留む 初枝


子を捨てた女の撓る腰ほどに夏の柳は揺れてをりけむ 真白


炎天の路上に終へし花槿をみなよなべてしたたかにあれ 久仁子


記録には残れる人の百数年誰の記憶に残ることなし 初枝


ポロロッカの大波に乗る冒険を終へた男が都に帰る 真白






平居久仁子 ・ 藤田初枝 ・ 山科真白



2010年8月下旬三人は奈良の都で枕を並べつつ楽しい時間を過ごした。



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